上越市出身の児童文学作家 小川未明の文学精神を継承し、新しい時代にふさわしい創作児童文学作品を輩出する目的で平成3年に創設された小川未明文学賞は、今回で28回を迎えました。
この度、最終選考会が行われ、応募総数409編の中から受賞作が決まりました。たくさんのご応募をありがとうございました。
「シャ・キ・ペシュ理容店のジョアン」(長編部門)
北川 佳奈 さん(35歳 女性 東京都在住)
賞金:100万円
記念品:「小川未明童話全集」(全16巻 別巻1 大空社)
大賞作品は株式会社 学研プラスから単行本で刊行されます。(令和2年秋刊行予定)
パリの理容店で働きながら、画家になりたいという夢を持つ男の子のお話を書きました。夢をかなえた先で、悩みをかかえる画家も登場します。夢というのはやっかいなもので、子どものころには持っていないと大人から残念がられ、大人になって大切に持っていると、苦しい思いをしたりします。そんな夢にまつわる色々な感情を、作品にこめました。
小川未明文学賞の受賞を夢見ていたので、今、ふわふわとうれしい気持ちです。この賞が作家としてのスタートとなることを幸せに思います。しかし、物語にも書いたとおり、夢をかなえた先には悩みがつきものだということも知っています。これからも、悩みながら物語を書いていきたいと思います。
小川未明は人間を描いた作家でした。人の美しさだけでなく、弱さ、醜さ、矛盾を伝える未明の作品は、人間愛に満ちています。そんな小川未明の名を冠した賞をいただいたことを名誉に思います。この度は選出いただき、ありがとうございました。
「トリロン」(長編部門)
かみや としこ さん(67歳 女性 愛知県在住)
賞金:20万円
名誉ある小川未明文学賞、優秀賞をいただき感謝の気持ちでいっぱいです。
第25回にも優秀賞をいただき翌年翌々年と応募してきましたが、見事落選。いったいもう何を書いていいのかと自信をなくしていました。
そんな中、あれこれ思い悩んでいるうちに、ふと頭の中に嫌なことを食う怪鳥トリロンがよぎりました。「トリロン」は10数年前に書き出したものの未完成のまま眠っていたものですが書き直してみようと思いました。
ここ10数年の間に、子どもたちを取り巻く環境もずいぶん変わりました。が、架空のものを信じる子どもの純粋さはまだまだ残っているはず。大人の責任として、書き手の責任として伝えなければいけないものがあるはずと、この度、トリロンを目覚めさせようと思った次第です。
なぜか今小川未明先生が眺めたであろう美しい上越の山々が目に浮かびます。
1次、2次の予選を経て最終選考に残った作品は8編です。受賞作2編を除くと、次の6編です。
(注)数字は受付順です。敬称略。
落合恵子、佐々木赫子、ねじめ正一、宮川健郎、小川英晴、株式会社学研プラス絵本・読み物編集室長
(注)敬称略
新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、3月27日(金曜日)に予定されていた「第28回小川未明文学賞贈呈式」は開催を延期します(時期未定)。
令和2年3月27日(金曜日)
学研ビル 3階 ホール (東京都品川区西五反田2-11-8)