上越妙高駅の東口に設置されているステンドグラスが、当市出身の日本画家である故・柴田長俊さんによるものであることをご存じですか。
柴田さんはどんな人だったのか、故郷へどのような想いを持っていたのか、小林古径記念美術館での「柴田長俊展」の開催に合わせて紹介します。
主な略歴
1949年(0歳)5月7日、現在の上越市西城町に生まれる。
1976年(27歳)多摩美術大学大学院美術研究科日本画専攻を修了。第3回創画展で「ガンジス河」が創画会賞を受賞(1983年、1986年も受賞)し、創画会会友に推挙される。
1980年(31歳)文化庁主催 第19回全国県展選抜展招待で文部大臣賞を受賞。
1988年(39歳)第15回創画展で創画会賞を受賞し、創画会会員に推挙される。
1989年(40歳)上越市で初の個展を開催(大和 上越店)。
1991年(42歳)旧上越観光物産センターのステンドグラスをデザイン。
1992年(43歳)上越市展の審査員に従事(1996年まで)。
1994年(45歳)雅子妃の森のモニュメントをデザイン。
1999年(50歳)雁木通りプラザのステンドグラスをデザイン。
2001年(52歳)上越市発足30周年記念事業として大和上越店で個展を開催。
2002年(53歳)高田駅のステンドグラスをデザイン。
2006年(57歳)総合博物館で「柴田長俊展」を開催。
2008年(59歳)城北中学校のステンドグラスをデザイン。
2011年(62歳)上越市シティ・イメージ・アドバイザーを務め、観桜会をはじめ、市の観光ポスターをデザイン(2014年まで)。
2013年(64歳)ミュゼ雪小町オープン記念として個展を開催。
2015年(66歳)上越妙高駅のステンドグラスをデザイン。
2022年(72歳)1月28日死去。
小林古径記念美術館 伊藤 舞実学芸員
故郷である上越市では、柴田さんが手がけた作品を数多く目にすることができます。例えば、ステンドグラス。上越妙高駅や高田駅など5つの公共施設に、今もすてきな作品が据えられています。
この「広報上越」も、2012年(平成24年)1月15日号から2022年(令和4年)12月号までの間、柴田さんが手がけた題字を用いていました。当市の冬の風物詩となった雪灯りのイベント「灯ともしびの回廊」の名付け親でもあり、デザインした題字は今でもポスターやパンフレットに使われています。
「祈り」に対する想い
幼少期、自然豊かな上越で暮らした経験は柴田さんの原風景となり、高校時代には民俗学者・柳田國男の著書に触れ、民俗学に興味を持ちます。その後15回にもわたって世界中を旅し、訪れた先々でさまざまな信仰や生と死の在り様に触れる中で、自然に対する畏敬の念や人々の「祈り」に対する想いを強めていきました。
自身が体感したそれらを表現し、人に伝える手法として選んだのが、自然由来の岩絵具を用いて描く「日本画」であり、教会など祈りの場で目にした「ステンドグラス」だったのではないかと思います。
重厚さと装飾性が「力」を増す
柴田さんの絵画作品は、油彩画にも見えるほどの厚い塗りと、印象強い装飾性が特徴的です。想いを込めるように、金や銀、岩絵具を惜しみなく用い、幾重にも色を重ねて描かれた作品から感じられる重厚さは、その前を素通りできないほどの強い印象を見る人に与えます。
そして、柴田さんがこだわったのが、画材と素材です。例えば、ラピスラズリやアズライトなどの鉱物を砕いて使われた「群青」色の岩絵具は、間近で見るとキラキラと輝き、絵がまとう神秘的な雰囲気をさらに引き立たせています。また、絵の下地となる板に紙や布を貼らずに直接色を塗り、あえて素材の木目や凹凸を生かすことで立体感や質感を表現しています。
色の重厚さと岩絵具のきらめきにより柴田さんの作品から受ける「力」をぜひ感じてほしいですね。
故郷の原風景を描いた「久比岐野十二景」より「寒月」。群青の空と銀の満月が美しい
同じく「久比岐野十二景」より「親鸞の海」。素材の凹凸(おうとつ)を雲や波に生かしている。表面の細かい凹凸(おうとつ)が繊細な白波をうかがわせる
高田駅入口のステンドグラス「高田の四季」より「桜」、柴田さんが手がけた「灯の回廊」の題字と左下の「冬の上越市」
夫は、暗くて重たい雪ではなく、澄んだ空と雪景色を描いていました (談:柴田長俊さんの妻 柴田 法子さん)
その人となり
生前の夫を思い起こすと、楽しそうに絵を描いていた印象がありますね。好奇心が旺盛で、誰にでも話しかけるところがあったので、旅先で知り合った外国人を突然自宅に招くなど、驚かされたこともありました。
一方で、自身の内にこもった強い想いを言葉でうまく表現することは苦手でしたので、作品を通してその想いを人に伝えたかったのだと思います。
故郷の心象風景と「祈り」
夫は「祈り」を追い求めていました。人の想い=祈りに、自分の気持ちを重ねていく。そうやって描いていました。晩年は山を多く描いていましたが、人々が信仰の対象とする山に対して、強い想いがあったのだと思います。特に自身の原風景でもある妙高山への畏怖の念は強く、スケッチもたくさん残っています。
故郷の風景は「自分にとって忘れられない景色」であり、「その景色を観たまさにそのとき、自分は何か大きなものに祈っていたんだと思う」と言っていました。妙高山や故郷の風景を描いた作品には、上越への郷愁や望郷の想いとともに、当時抱いていた「祈り」の気持ちが凝縮されているのだと思います。
(左)妙高山のスケッチ。リアルなものからラフなものまで多くのスケッチが残っている。
(右)柴田さんの実家は元呉服店であり、気に入った端切れをコラージュに使っていたそう。「私のストールが見当たらないと思ったら、いつの間にかここに仲間入りしてて」と笑いながら話す法子さん
上越への想いと「明るい雪」
上越を語る上で切り離せないのは、雪だと思います。子どもの頃から、まちや田畑が一面雪で覆われる景色を見ていたので、「自分の基本にあるのは雪景色だ」と話していました。その雪も、「自分は重く暗いイメージの雪ではなく、「明るい雪」を描きたい。暗い雪雲の上には青く澄んだ空が広がっている。それを表現したいんだ」と言って、澄んだ空と雪景色を描いていました。
また、アトリエにはさまざまな題字のデザインが残っていますが、そのほとんどが上越に関係あるものです。きっと、故郷の上越市に貢献したいという気持ちが強かったのでしょうね。
こだわり抜いた色と素材
自然への畏敬の念が根底にあった夫は、「岩絵具」にこだわっていました。大きな作品には大量の絵の具を使いますし、また色そのものへのこだわりも強く持っていましたので、あるときから珊瑚やラピスラズリなどの鉱物を自ら仕入れ、砕くところから創作を始めていました。岩絵具は、細かく砕くほど色が薄くなります。砕いた鉱物などを網の目の細かさが異なるふるいにかけて、粉の細かさごとに分けるのは、私たち家族の仕事だったんですよ。
夫は絵のほか、ステンドグラスの制作にも精力的でした。透き通るような色への憧れがあったのでしょうね。ステンドグラスに日の光が差して偶然現れる色や光の見え方など、自身の力の及ばないもの(=自然)が想像以上のものを魅せてくれることに大きな魅力を感じていたようです。
絵を描くために使用する板や絵を入れる額の装飾、晩年に多く制作したコラージュ作品に用いた素材は、あえて人が作ったものや使ったものを用いていました。人が関わり、人の思い出があるものを使うことで、「人の想い」を作品に込めたかったようです。
(上)柴田さんがデザインした題字などの図案。ほとんどが上越市に関わるものであることが分かる
(下)鮮やかな赤色に使われる珊瑚。旅先で良いと思ったものを仕入れていたそう
市民の皆さんへ
ぜひ、今回の企画展で、夫が作品に込めた「祈り」や故郷に対する想いを感じ取ってもらえたらうれしいです。
生涯を通じて「祈りの風景」を描いてきた柴田さんの日本画およびステンドグラス作品を展示し、柴田さんに内在する「祈りの心象」を紹介します。
学芸員によるギャラリートーク
学芸員による解説を聴きながら、じっくり鑑賞しませんか。
問合せ:総合政策課、財政課(電話:025-526-5111)
令和6年度予算は、令和5年度補正予算と一体的に、15か月予算として編成しました。
急速に進む少子高齢化や人口減少に加えて、年始の令和6年能登半島地震のような自然災害の頻発化・激甚化とともに、気候変動に適合した脱炭素社会への転換など、社会経済環境の急激な変化に対応していくことができるよう、市民の生活の質を高め、若者が帰ってきたくなるような、「暮らしやすく、希望あふれるまち上越」の実現に向けた取り組みを確実に実行していきます。
R5:令和5年度既決予算、補正予算で実施
R6:令和6年度当初予算で実施
一般会計予算
1,023億1,903万円(前年度比 7.9%増)
市民一人当たりでは56万965円(住民基本台帳人口18万2,398人、令和6年3月1日現在)
実質的な一般会計予算額(注)制度融資預託金などを除いた額
990億6,337万円(前年度比 6.4%増)
令和4年度末 | 令和5年度末(見込み) | 令和6年度当初(編成時点) |
---|---|---|
75億9,859万円 | 56億4,106万円 | 53億4,948万円 |
区分 | 令和4年度末 | 令和5年度末(見込み) | 令和6年度当初(見込み) |
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市債残高の状況 | 1,126億7,000万円 | 1,064億6,273万円 | 1,020億7,965万円 |
うち通常分 | 697億2,439万円 | 660億1,580万円 | 647億7,010万円 |
うち第三セクター等改革推進債を除く | 667億1,405万円 | 650億6,518万円 | 641億3,635万円 |
市が特定の事業を行う場合、その事業で得られる収入を財源とするため、一般会計とは別に経理を行う会計です。
特別会計名 | 予算額 | 前年度比 |
---|---|---|
国民健康保険 | 162億685万円 | -0.3% |
診療所 | 4億868万円 | -5.5% |
介護保険 | 241億1,304万円 | -0.5% |
後期高齢者医療 | 27億6,944万円 | 15.4% |
工業用水道事業生産 | 令和5年度をもって廃止 |
事業会計名 | 予算額 | 前年度比 |
---|---|---|
病院事業 | 33億6,071万円 | 2.7% |
下水道事業 | 205億4,659万円 | -2.7% |
ガス事業 | 105億3,713万円 | -7.3% |
水道事業 | 123億9,605万円 | 18.8% |