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第34回小川未明文学賞 受賞作決定

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印刷用ページを表示する 掲載日:2026年3月31日更新

 小川未明文学賞にご応募いただいた801編(短編作品453編、長編作品348編)について、令和7年2月12日(木曜日)に最終選考会を行い、下記のとおり大賞と優秀賞が決定しました。

大賞(1編)

第34回小川未明文学賞大賞受賞者 樹あゆりさん(画像)

 作品名:「うどんの神さま」(長編作品)

 作者:樹 あゆり(いつき あゆり)(72歳 香川県在住 主婦)

 賞金:100万円
 記念品:「小川未明童話全集」(全16巻 別巻1 大空社)

大賞受賞作は単行本として株式会社Gakkenから令和8年11月頃に刊行予定。

あらすじ

 小学四年生の河野陽翔(こうのはると)は剣道が大好きな少年である。彼の家は祖父の代から続くうどん屋の老舗である。母と兄の悠真(ゆうま)が店を切り盛りしており、小さな店だが、地元の人たちに愛される人気店である。ある日、陽翔と悠真は、店先で生き倒れている男を助ける。男はじっと兄を見つめているが、兄は男の顔を見た途端家から出ていくように言い放つ。この男は十年前に家族を残して一人都会に出ていった父親であった。この一件から、陽翔の家族やお店の周囲に大きな出来事が次々と巻き起こる。

受賞の感想

 散歩をしているとき、家事をしているとき、なにげに心が凪いだとき、ふと物語の断片が降ってくることがあります。

 「ある日、店の戸締まりをしようとしたら見知らぬおじさんが倒れていた。そのお店は、うどん屋さん。見つけたのは小学生の男の子とお兄さんだった。」今回もそこから物語が始まりました。

 剣道は、家族が子どもの頃からやっておりましたので、いつか剣道の試合を書いてみたいと思っていました。うどん屋さん、という設定は、言わずもがな、うどん県民ゆえの選択でした。主人公の陽翔は、頭の中でポンッと生まれると、一人で勝手に動く、しゃべる、笑う、泣く。書き手の私は大いに翻弄されましたが、最後まで楽しみながら着地することができました。

 このたび、ずっと憧れていた小川未明文学賞大賞に選んでいただけたこと、心より感謝申し上げます。書き続けてきて本当に良かったと思いました。この元気で気の優しい主人公が、ひとりでも多くのお友達や児童文学を愛する方々に読まれ、面白い子だな、と笑顔になってもらえたら幸いです。

優秀賞 (1編)

第34回小川未明文学賞優秀賞 隅垣健さん(画像)

 作品名:「おとぎ電車と宵待の橋(長編作品)

 作者:隅垣 健(すみがき たけし)(56歳 京都府在住 大学院生)

 賞金:20万円
 記念品:「名作童話 小川未明30選」

あらすじ

 神明ダムに社会科見学に訪れた小学五年生の賢一は、ダムの果たしている役割を担任のノリッペ先生から学んだ。ダム湖の底には、夕ヶ瀬集落が沈んでいて、そこはノリッペ先生がかつて子どもの頃に住んでいた故郷でもあった。そこにはおとぎ電車が走り、蛍の名所「宵待橋」まで、多くの人を運んで賑わっていたことを聞く。おとぎ電車に関心を持った賢一たちは、図書館やウェブサイトでおとぎ電車について調べ、ダムのそばにかつての乗り場跡があることを知る。

 週末に、賢一は弟のマモルを連れ、友人と乗り場跡の探索に出かけるが、途中でマモルを見失ってしまう。マモルを探していた賢一はダムが完成する前の昭和の世界に迷い込んでしまう。宵待橋行のおとぎ電車に乗っていったマモルを探しに行くため電車に乗る賢一。そこで小学生の頃のノリッペ先生と出会う。

受賞の感想

 自分が住む町に、昔どんな出来事があったのか気になったことはないでしょうか。この物語は、そんな素朴なきっかけから生まれました。

 「かつて、この町には『おとぎ電車』というトロッコ列車が走っていた。終着駅は行楽地として、多くの親子連れでにぎわっていたらしい。けれど夢の鉄路は今、ダムの湖底に沈んでいる。人々の楽しかった思い出と共に。」そんな思いを巡らせながら、ダムの畔を歩くうち、心の中で物語が膨らみ始めました。

 日々新しいものが生まれ、暮らしが便利になっていく陰で、大切にされてきた多くのものがそっと姿を消していきます。しかし、たとえ目に見えなくなっても、そこには確かに人々の想いが宿っています。その想いは時を超えて残り、今を生きる私たちの心を揺さぶるのではないでしょうか。この物語では、水底に消えた世界と現代の子どもたちのつながりを描きたいと考えました。

 私の創作への挑戦はまだ道半ばで迷い続ける日々ですが、この度素晴らしい賞をいただき、励みになるとともに、歩んできた方向は間違っていなかったと思えるようになりました。これからも読む人の心に寄り添う作品を書き続けてまいります。本当にありがとうございました。

最終選考作品

1次、2次の予選を経て最終選考に残った受賞作以外(大賞・優秀賞受賞作を除く)の作品は次の7編です。

  1. どんどん出る! (短編作品)
     作者名:さいき けいこ(京都府)
  2. こんどあえたら (短編作品)
     作者名:緒島 英二(神奈川県)
  3. 満月に吠えると (長編作品)
     作者名:寺田 喜平(岡山県)
  4. フライアウェイ -白銀の翼- (長編作品)
     作者名:わく ひろこ(東京都)
  5. 床屋にきたライオン (短編作品)
     作者名:わっと(栃木県)
  6. 風神さまのお留守番 (長編作品)
     作者名:佐々木 さき(新潟県)​
  7. ゴンスケ (長編作品)
     作者名:斉藤 誠(東京都)

(注)番号は受付順です。敬称略。

最終選考委員(6人)

今井恭子、小川英晴、小埜裕二、柏葉幸子、矢崎節夫、株式会社Gakken ノベルチーム 編集長
(注)敬称略

選評

第34回小川未明文学賞 選評 [PDFファイル/351KB]

「書き手の皆さん、がんばれ!」 今井 恭子

 大賞となった『うどんの神さま』は、老舗のうどん屋を舞台に家族の再生を描き好感が持てた。4年生の陽翔の語りにはふざけた表現も目立つが、シリアスなテーマをユーモラスに明るく描いており、一番おもしろかった。タイトルにもなっている「うどんの神さま」の印象が薄かったのが残念だった。

 優秀賞の『おとぎ電車と宵待の橋』は、5年生の賢一と弟がおとぎ電車に乗ってダム湖に沈んだ集落へ迷い込む魅力的な設定だったが、そこで子供だった担任の教師や父親に出会ったあたりから解せない点が出てきた。集落の地図が欲しいと思いながら読んだ。

 『風神さまのお留守番』は、自分の名前にコンプレックスのある4年生の美叶が、町に伝わる風神の言い伝えと発電用の風車にかかわる都市伝説を体験する。4年生の美叶の語りにしては文章が難しく、ストーリーも難解だった。この作品に限らず、難しい言葉や漢字を使う人がとても多いが、読者の年齢層も考える配慮が欲しいといつも思う。

 『フライアウェイ-白銀の翼-』は、養蚕農家を嫌い都会に憧れる6年生の結が、あるきっかけで三眠蚕という突然変異の蚕が作る糸を復活させようと奮起し、養蚕を継ぐ決心をするまでを描いている。養蚕、特に三眠蚕という極細の生糸を取れる蚕について詳しく、非常に興味深く読んだ。タイトルは再考を。スキーか何かの話題だと思った。

 短編の『床屋にきたライオン』は、年老いて店じまいする床屋にやってきた、やはり年老いたサーカスのライオンとのやり取り。古風な印象の物語で斬新さはないが、どの場面も絵が浮かんでくる。絵を付けたらいい絵本になると思った。

 年々応募数も増え、文章もうまくなっていると感じる。多くの書き手のエネルギーをひしひしと感じた。賞を取った人も、逃した人も、ここからさらに一歩先へ。書き手の皆さん、がんばれ!応援しています。

「「フライアウェイ-白銀の翼-」「おとぎ電車と宵待の橋」「床屋にきたライオン」の三作を推す」 小川 英晴

 今回、私は『フライアウェイ-白銀の翼-』『おとぎ電車と宵待の橋』『床屋にきたライオン』を意中の作品として選考に臨んだ。その他、『ゴンスケ』『どんどん出る!』にも注目したが、何よりも大作の二作品は、物語の魅力と文学的感銘の深さにおいてほかの作品を圧倒していた。

 『フライアウェイ-白銀の翼-』これは明治時代から続く養蚕農家の娘・結へと続く物語だ。かつてひいばあちゃんの作った生糸はエリザベス二世の戴冠式でドレスの刺繍として使われていた。蚕が口から糸を吐いて繭を作るためには、四回脱皮し五つの成長過程を経なければならない。この物語を読み進んでいくほどに、まさにその成長の渦中にいるような錯覚にさえさせられた。また、『おとぎ電車と宵待の橋』では、ダムの下に没してしまった町と当時あったおとぎ電車への調査へ向かう賢一がその途上で弟のマモルと突然当時の町に迷い込み、そこで若い日のノリッペ先生や若き日の父に出会うという話だ。そこで二人は奇跡的体験をし、今ここに、かつてあった世界と一つに重なり合う。物語は心温まる文体によって展開していく。

 もう一点、『床屋にきたライオン』では、歳を取り、もう前のように持てる力を十分に発揮できなくなった床屋の老主人と、かつてサーカスの花形であったライオンとのしみじみとした心の交流が描かれている。読み進むほどに、心の変化が美しい陰影となって読者の心に迫ってくる。この作品をぜひとも絵本にしてほしいと願っているのは、私ひとりだけではないだろう。

 最後に、大賞を見事に受賞した『うどんの神さま』は、読みやすく、かつ知らず知らずのうちに読者の心を魅了していく力を持った作品。私もひかれたが、父親像の設定に少なからず疑問を持った。家を出てからの経験が語られず、父親像にリアリティが感じられなかったからだ。しかし、よくできた作品であることは間違いない。大賞受賞に異論はない。

「失われた言葉を取りもどす」 小埜 裕二

 子どもたちが小説を読み、自分の知らない世界を体感することで成長するように、小説の中の子どもも自分の身のまわりで起こる出来事を見聞きし語ることで成長します。大賞を得た『うどんの神さま』は<父帰る>のお父さんが主人公のように見えますが、父の子どもである「ぼく」や「ぼく」の兄の物語と言っていいでしょう。活き活きとした語り口調、ユーモアとウィットに富んだこのお話は、文学の面白さを今の子どもたちに味わわせてくれます。うどんの匂いや味が失われかけたおばあさんの記憶を取りもどすように、兄弟から失われた「お父さん」という言葉を取りもどすことがこのお話の文学的なテーマです。認知より大切なもの――体や五感の感覚――があるということの明示が私たちを勇気づけてくれます。剣道の裂帛のかけ声や梅子おばさんの饒舌など、かつての地域社会や家族には、言葉が真剣に、かつ円滑に使われていました。小説家になることができなかったお父さんが肥満しているのは、言葉が体の外に出なくなったということを暗示しています。家族の再生、地域社会の再生のヒントがこのお話の中にあると言えるでしょう。

 優秀賞を得たのは『おとぎ電車と宵待の橋』です。これはとびきり新しいお話ではありませんが、物語の豊かなあじわいを感じさせてくれるものでした。細部の整合性にいささか違和感はありましたが、物語の構想と明るい読後感が評価できます。『フライアウェイ-白銀の翼-』も面白く読みましたが、地域から世界へといったテーマがやや性急に展開されたのがもったいなかったです。

 短編では『どんどん出る!』に巧さを感じました。『風神さまのお留守番』『ゴンスケ』『床屋にきたライオン』は評価が分かれ、高い評価を与える選考委員もいました。『満月に吠えると』『こんどあえたら』にはドラマのような面白さも感じました。

「選評」 柏葉 幸子

 第34回小川未明文学賞の大賞は『うどんの神さま』に決まりました。テーマは古いと思いましたが、書きなれた文章で、家族やまわりの人たちも魅力的でした。子ども目線とすると離れており、大人の目線では物足りなさがある。でも大きな破綻もなく。家族再生の物語として読ませる力はありました。子どもの本とするなら、次男の視点で書き直したほうがいいと思います。

 『おとぎ電車と宵待の橋』が優秀賞です。昭和の時代にタイムスリップするお話でした。担任の先生や自分たちの父親の若い頃に出会います。せっかく出会うのだから、そこから今まで何か謎だったことが解決するとかにできたらよかったです。大人は読めば懐かしいでしょうが、今の子どもにとって昭和の電車や風景を懐かしくおもしろがるか?が気になりました。あと弟が昔の電車に乗れた理屈を書かなければいけないと思います。

 私は『ゴンスケ』と『風神さまのお留守番』の二作もおもしろかったと思いました。『ゴンスケ』はロボットが感情を持ってしまうという昔ながらのテーマでしたが、なんでもAIに頼っていくことになる今、正しいことを教えてくれながらゴンスケのように個性のあるAIがあれば楽しいし、AIに頼ることも怖くないのかもと思えました。ゴンスケが町内会の人たちにも好かれていく様子にほのぼのしました。『風神さまのお留守番』は土地の伝承をうまく絡めて、そこにまきこまれていく主人公たちのお話でした。構成はしっかりしていたと思います。風力発電の描写、名前のコンプレックス、少し長すぎたように思えましたが、謎の回収は見事でした。短編は『どんどん出る!』の視点がユニークでしたが、もう少し鉛筆の不思議さがわかりやすかったらいいと残念です。

「選評」 矢崎 節夫

 今回最終に残った9編は、それぞれ読みごたえがあって、作者に感謝したい。

 9編のうち1編でも短編をと願ったが、長編に比べて、少し物足りなさが残ったのが、残念だった。短編の中では、『床屋にきたライオン』を幼年童話として楽しく拝読したが、床屋さんがライオンの出るサーカスを見に行くのに、時間がないからかタクシーで行くのに、では床屋にきたライオンはどうやって来たのか書いていないのが、もったいなかった。人に出会えば大さわぎになるだろうし、その姿がここで書いていれば、もっと良かった。

 『うどんの神さま』はテンポも良く、最初からドラマを感じさせて、楽しく拝読することができた。兄弟の、家出をして戻ってきた父に対する気持ちも、母の父に対する気持ちも、まっすぐに入ってきて、上手だなと思った。ただ、「うどんの神さま」の神さまの存在が、作品の中でふれてもらえるともっと良かったと思った。退学が休学へというひっくり返しもうまいなと思った。とにかくうどんのようにツルツルと私の中に入ってきて、いい作品だなと感心した。

 『おとぎ電車と宵待の橋』は、ダムに沈んだ村とその後の姿と、ノリッペ先生と少年たちの姿が目に見えて、楽しく読み進むことができた。おとぎ電車、宵待橋など、読み手を先に先にと進んでいく上手さと、迷子になった弟など、書き慣れている方だと思いながら、私の中では一番楽しく読めた。

 『フライアウェイ-白銀の翼-』は、養蚕を通して、主人公・結が成長するのが魅力的だった。初めて知ることが多く、きっと作者が興味を持って調べたことが、この作品を生み出したのだと思いながら、一つ勉強させてもらった楽しさが読後に残った。こういう作品が生まれるお陰で、児童文学の世界が広がるとうれしい作品だった。

 小川未明は、リアリズム以上のリアリティでメルヘンを書いた作家だと私は思っているので、その出現を望みたい。

「選評」 株式会社Gakken ノベルチーム 松山 明代

 今回の最終選考は、長編6編、短編3編、いずれも表現力が高く力作揃いでした。

 大賞『うどんの神さま』は、家族の再生が明るく爽やかに描かれた作品。大人の問題が中心となり、主人公の葛藤や成長が希薄なのが惜しまれますが、物語全体の完成度は高く、うどんの描写も秀逸でした。優秀賞『おとぎ電車と宵待の橋』は、表現が美しく、幻想的な映像が目に浮かぶようでした。各登場人物の人柄ゆえの行動や思いが描かれていると尚よかったと感じます。『こんどあえたら』は、主人公とクラスメートの友情が丁寧に描かれていました。ただ普遍的なテーマゆえに、今の時代を捉える新しさがほしかったところです。『どんどん出る!』は、やや既視感のある内容であり、独自性、説得力が望まれます。構成が巧みでテンポよく読み進められました。『床屋にきたライオン』は優しい気持ちになれるファンタジー。一方で、抜きんでた個性や現代の子どもたち向けの設定が欲しいと感じます。『満月に吠えると』は起伏に富んだ展開が魅力的ですが、構成のバランスやつながりにもう一工夫があるとよかったように思います。『ゴンスケ』は、現代のAIが状況を鑑みた設定であれば、子どもが共感しやすい今日的な物語になったのではないでしょうか。全体のまとまりがよく、散りばめられたユーモアが魅力でした。『風神さまのお留守番』は、名前のコンプレックスを抱える主人公の心情をリアルに描き出していました。ファンタジーとリアルな要素が、より溶け合っていると完成度が増したように思います。『フライアウェイ-白銀の翼-』は、養蚕というテーマが興味深く表現レベルも高い作品でしたが、各人物の感情の描き方の点で惜しまれます。

 賞を逃した作品も、書き手の方々の思い、熱意や個性を感じました。深く敬意を表すとともに、今の、そしてこれからの子どもたちが感情を載せて読むことができる作品との出会いを引き続き楽しみにしております。

 

その他

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