あったてや。あるとき、ムギワラとモエクレ(木の燃え残り)とマメが、いろりから抜け出て、上方まいりに出掛けた。ほうして、川のところへ出たら、橋がかかっていなかった。いっとき三人は、
「はてどうしよう。おおごった。」
と困っていたてや。ほうしると、ムギワラが、
「おれが、いっち長いんが、橋になるこて、お前方、おれの上を渡れや」
そう言うて、橋になったてや。はじめに、モエクレが渡っていたどこが、橋の真ん中で、川風にあおられて、モエクレの火が真っ赤におきて、ムギワラに燃えついた。ほうして、ムギワラとモエクレは、川へ落って、ジーブー、ジーブーと流れていったてや。
みていたマメが、その二人の落ち方が、あんまりおかしくて、アハハ、アハハハと大笑いをしたら、マメの口が破けてしもたてや。こんだ、マメは、口が痛くて、泣いていたら、そこへ富山の薬屋が通りかかって、
「マメ、マメ、お前、なんで泣くや」
と、わけを聞いた。
「よし。おれが、そんま縫うてくっるすけ、泣くな」
というて、黒い糸の針を、背中の荷物から出して、シクシクと縫うてくれたてや。ほうして、マメは、口の痛いのが治ったども、そんどきの黒い糸の縫い目が、今で、黒くなって残っているてや。いちごブラリ。
(語り手 渋柿浜 佐藤コトノ 昭和54年 77歳)
(出典:昭和63年5月30日発行 大潟町史)