上越市に生まれ、激動の昭和を駆け抜け、新潟県出身者で初めて「文化勲章」を受章した日本画家・小林古径をご存知ですか。
今年は、古径生誕140年。
高田城址公園に佇たたずむ「小林古径記念美術館」で彼が遺した名作の数々に触れ、かつての住まい「小林古径邸」を訪れてみませんか。
小林古径記念美術館 笹川 修一 統括学芸員
逆境に負けず、画家として大成
小林古径は、伝統的な日本画に写実的で近代的な要素を取り入れ、「新古典主義」と呼ばれる新たな画風を確立した日本画の巨匠です。
幼くして家族を失いながらも、逆境に負けず大成したその道のりは、並大抵の努力では成し得なかったでしょう。作品制作に対する真しんし摯な姿勢と、心から絵を愛していたからこその功績でしょうね。
彼を一言で言い表すとしたら、「修行僧」という言葉がぴったりだと思います。寡黙で内向的な性格であった古径は、一度描き上げた作品でも満足がいくまで描き直したり、晩年には、病気を患いながらも描くことを止めなかったりと、終生、絵に対して真剣に向き合っていました。
美しい描線と清澄な色彩
古径の作品の特長は、何と言っても「端正な描線」と「澄んだ色彩」です。
皆さんは、筆を使って真っ直ぐな線を描くことができますか。それもゆがみなく、太さも変えずに。
「線の求きゅう道どう者しゃ」ともいわれる古径は、非常に丁寧で美しい線を描きました。自身のサインをかくのに5分もかかったというエピソードがあるほど、線に対するこだわりは強いものでした。
また、淡く清らかな色調は、描かれたものの質感や匂い立つようにさえ感じられる古径の作品をさらに引き立たせています。
古径の作品は、派手さはありませんが、見るほどに「味わい」が感じられ、美しく気品があります。ぜひ古径記念美術館で、このまちに生まれた巨匠の名作を味わってください。
「丘」(小林古径記念美術館蔵)
文化勲章を受章した翌年の作品。円熟期の美しい描線と清澄な色彩が、高い気品を感じさせます。
髪の毛の一本一本、細部にわたって丁寧に描かれていることが見て取れる。
頬の赤みが何とも美しい。薄く何度も重ねて塗ることで、絶妙な色合いが醸し出されている。
この一本の線も、非常に時間をかけて一筆で描かれている。ゆがみなく、太さも変わらずにこれだけ美しい描線が描けるのは、古径をおいて他にいない。
小林古径邸(右)と画室(左)
柱と鴨居との接合部。「面中(めんなか)仕事」と呼ばれる施工方法で、鴨居は、面取りされた柱の角度がついた部分にぴったりと合うように加工され、接合されている
緩やかにアーチを描く「むくり屋根」は、謙虚さや奥ゆかしさを表現している
障子の組子も一本一本が全て面取りされている。 近くで見ると、交差する部分は場所によって縦横の接合方法が異なっていることが分かる
アトリエ雁木 歴史的建造物保存修復研究室 主宰 清水 恵一 さん
「私が好きだという家を、つくってください」
古径は新しく自宅を建てるに当たり、建築家・吉田五十八にただ一言、こう注文しました。なんとも難しい注文ですよね。
吉田はこれを受けて、当時すでに画家として名を成していた古径の人柄や作品を研究します。どのような家が好まれるだろうかと思案を重ね、お城を手掛けたこともある京都の宮大工・岡村仁三、建具の名工・佐野開三と共に、江戸時代からの古い数寄屋造りを土台としながらも、現代的な要素を積極的に取り入れた、美しい近代数寄屋建築を造り上げました。
期待にたがわぬ出来栄えに、古径はこの家を大層気に入り、完成後もすぐには引っ越さず、半年ほど眺めて楽しんでいたそうです。
ちなみに、吉田も後に文化勲章を受章しています。造った人と住んだ人がいずれも文化勲章の受章者というのは、すごいことだと思いませんか。
「古径さん家」においでください
国の登録有形文化財である古径邸は、随所に当時の高い施工技術(上写真)を見て取ることができます。全国から多くの建築関係者が視察に訪れているほか、建築関係の雑誌などにも幾度となく取り上げられています。
私は古径邸の移築・復原に関わらせていただいたのですが、実は、上越市への移築が決まった直後に、東京都からも元の所有者に対して「譲ってほしい」と打診があったそうです。縁あって古径の故郷である上越市に移築・復原できたことに、運命的なものを感じますね。
市民の皆さんには、そんな古径邸にもっと気軽に足を運んでいただき、縁側や2階から庭を眺めながら、この家で暮らしていた古径を身近に感じてもらえたらうれしいです。
ミュージアムファンクラブ 保坂 香織さん
お気に入りのカフェに行く気分で気軽に美術館に立ち寄ってほしい
この美術館がきっかけで、古径のことや文教都市として歩んできた上越市の歴史・文化を学びました。若い人たちにも自分のまちの魅力を語れるようになってほしいと思い、美術館に足を運ぶきっかけづくり(今風に言えば美術館の「推し活」)に取り組んでいます。
私は四季の移ろいが感じられる二ノ丸ホールがお気に入りで、年間パスポートを使ってよく立ち寄っています。 皆さんも美術館や古径邸の素敵な空間で、思い思いの時間を過ごしてみてください。
小林古径記念美術館友の会 会長 植木 哲夫さん
「市民の宝」、古径記念美術館で非日常的な体験を
「古径の作品に触れ、その素晴らしさを多くの人と共有したい」という思いで、平成19年から活動しています。
美術館には、古径のほかにもさまざまな作品が展示されています。ゆったりと芸術作品に向き合う時間は、忙しい現代人の感性を刺激し、心を豊かにしてくれます。「美術館は敷居が高いな」と感じている人も、気軽に訪れてみてください。
友の会で、学芸員さんなどによる美術講座や近隣地域の美術館巡りなど、一緒に楽しみませんか。
古川 幸さん(右) 、千花子さん
子どもと一緒に巡るのにちょうど良い広さなので、散歩の途中に寄ることもあります。展示だけでなく、子ども向けのワークショップがあるのも良いですね。
石黒 友佳子さん
昨年、高校生キュレータープロジェクトに参加しました。美術館は、あれこれ難しく考えなくても、自分が「好きだな」と感じる作品を探すだけでも楽しめますよね。
北川 寛さん、のり子さん
東京から観光に来ました。上越は市民の皆さんが文化を大切にしていることがよく伝わります。全国的にも有名な古径さんのことを、これからも語り継いでいってほしいですね。
古径生誕140年を記念して、古径が展覧会に出品した作品を中心に、初期から晩年に至る作品や関連資料を展示します。
入館料(企画展会期中) 一般700円、小・中高生350円(幼児、市内小・中学生は無料)
要申し込みイベントは、9月15日(金曜日)以降にメール(kokei-koza@city.joetsu.lg.jp)または電話で申し込んでください。(迷惑メール防止のため、@を全角にしています。メール送信時は@を半角にしてください)
伊藤 舞実 学芸員
今回の展覧会では、全国から古径の代表作が集まります。生涯を通して描いた作品と、名作を生み出した画室、そして古径が過ごした住まいを一度に味わえるのは、古径の故郷・上越市ならではです。
ちなみに、私の一押し作品は「犬」です。2匹の犬を飼っていた古径の日常を切り取った作品です。ほのぼのとした気持ちになれるこちらの作品もお楽しみに。
問合せ:市民安全課(電話:025-520-5660)
近年、激甚化・頻発化する災害から自身や家族、地域を守るためには、地域による日頃の備えが不可欠です。同じ内容の防災活動や避難訓練を毎年繰り返し行うことも大切ですが、少しやり方を変えてみたり、新しい学びを取り入れたり、ひと工夫加えて実施してみませんか。できることから始めてみましょう。
地域で防災活動を行う際の企画や悩み事は、市が委嘱する「防災アドバイザー」にご相談ください。
活動中の33人全員が、日本防災士機構が認証した「防災士」です。
町内会や自主防災組織からの要請に基づき、地域の防災訓練や防災活動の支援を行います。
ポイント
地域の防災活動で、こんなお悩みはありませんか
防災アドバイザーが、地域に出向いてサポートします
北城町2丁目町内会 会長 江川 恵 さん
コロナ禍で実施を見合わせていた避難訓練や防災研修を復活させるに当たり、まずは町内会の防災担当者が防災について学ぶ機会を設けたいと思い、防災アドバイザーを講師に迎え、研修会を実施しました。研修では、自分たちが住む地域の災害リスクを確認したほか、家庭での備蓄など自身でできる「自助」について教わりました。今回学んだことは、住民を対象とした防災訓練で広くお伝えし、防災意識の向上に役立てたいと思います。
防災アドバイザー 関谷 照子 さん
私は防災アドバイザーとして、さまざまな地域で防災に関する講話を行い、防災訓練の企画に携わってきました。また、ポリ袋でカレーライスや蒸しパンを作る料理教室や、身近なものでコップやお皿を作る工作教室など、避難所で役立つ知識としてお教えしています。これからも、自身の得意分野を生かして、市民の皆さんの災害への備えをサポートしていきます。
防災アドバイザー 堀口 基 さん
いつ起きるか分からない災害に対応するためには、自分の身は自分で守れるよう学び備える「自助」と、隣近所で顔の見える関係性をつくり助け合う「共助」の、日頃からの取り組みが大切です。ご近所で、いざというときのための訓練を行い、備えることで、災害が発生したときに互いに助け合える関係性が生まれます。地域で防災訓練を行う際には、私たちも呼んでください。安全に助け合うための知識や技術を一緒に学び合いましょう。
「乳幼児の切れ目のない子育て支援」について、市長と語り合いませんか。
開催日 | 会場 | 時間 | 定員 | 申込期限 |
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10月27日(金曜日) | 市民プラザ | 午前10時~11時30分 | 20人 | 10月10日(火曜日)まで |
市長が地域に赴いて執務を行い、市民の皆さんと個別の面談形式で意見交換します
開催日 | 会場 | 時間(組) 1組20分 | 申込期限 | 申込・問合せ先 |
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10月3日(火曜日) | 板倉コミュニティプラザ | 午後2時~5時(6組) 午後6時30分~8時30分(4組) |
9月19日(火曜日)まで | 板倉区総合事務所 (電話:0255-78-2141) |
10月7日(土曜日) | 直江津学びの交流館 | 午後2時~5時(6組) 午後6時30分~8時30分(4組) |
広報対話課 (電話:025-520-5615) |
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10月16日(月曜日) | 大潟コミュニティプラザ | 午後2時~5時(6組) 午後6時30分~8時30分(4組) |
9月29日(金曜日)まで | 大潟区総合事務所 (電話:025-534-2111) |
糸魚川・上越・妙高市をカヤック、自転車、ハイクで巡る環境スポーツイベントが晴天の下開催されました。県内外から個人と団体合わせて116人の選手が汗を流しながら競技に参加する姿が見られたほか、3市の市長がそろって大会に参加し、米田糸魚川市長から中川市長へ、そして、城戸妙高市長へとつなぎました。