現在の農業は、農地の大区画化や機械の大型化、作業の共同化などにより、効率化・省力化が図られてきましたが、一方で、人口減少や高齢化の進行などにより、深刻な担い手不足に直面しています。
特に中山間地域では、約8割で後継者がおらず、今後3年間で約3割の農業者が離農する意向であるとのアンケート結果も出ています。
このような状態の解消に向けて、農村振興課内に中山間地域農業対策室を新たに設置し、中山間地域における農業の振興と鳥獣被害対策を一体的に推進することとしています。
上越市中山間地域振興基本条例では、市内の中山間地域を「金谷区、谷浜・桑取区、安塚区、浦川原区、大島区、牧区、柿崎区、吉川区、中郷区、板倉区、清里区及び名立区の区域」と定義しており、この区域は、上越市の総面積の約7割、人口の約3割、全耕地面積の約4割を占めています。
一方、「農林統計上の地域区分で分類」される場合や「山間地や地理的条件が悪く、農業の生産条件が不利な地域」とされる場合など、中山間地域の定義や範囲も様々ですが、国全体では総面積の約7割、人口の約1割、全耕地面積の約4割を占めるといわれています。
図 上越市における中山間地域(市中山間地域振興基本条例)
農業・農村をイメージする方が多いのではないでしょうか。
私たちが生きていく上で必要な米や野菜などの生産の場としての役割だけではなく、中山間地域で農業が継続して行われることにより、私たちの生活に様々な「めぐみ」をもたらしています。
このめぐみを「中山間地域が持つ多面的機能」と呼んでいます。
水田は雨水を一時的に貯留し、洪水や土砂崩れを防いだり、多様な生きものを育みます。
また、美しい農村の風景は、私たちの心を癒し・和ませるような、目に見えない価値をもたらすなど、様々な役割を果たしています。
その効果は、中山間地域だけでなく、周辺地域全体にまで及んでいます。
図 多面的機能のイメージ(農林水産省ホームページより引用)
中山間地域が持つ多面的機能は、人々が自然と関わりあう中で維持されてきたものです。
中山間地域においてこうした人々の営みが良好に保たれていることが、周辺地域における生活の安全・安心をも支えているといえます。
一方で、中山間地域では、農業の担い手不足・不利な耕作条件による荒廃農地の増加・拡大が深刻化し、多面的機能の低下が心配されています。
近年、都市部にも甚大な被害をもたらす集中豪雨が頻発していることも、こうした中山間地域が持つ多面的機能の重要性やその価値を改めて見直す機会になっています。
お金で買うことのできないものであり、中山間地域の農業や農村の持つ様々な「めぐみ」を思い、支えていくことが必要なのではないでしょうか。