農作物への鳥獣被害の発生・拡大防止に向けて、集落単位の総合的な鳥獣被害対策を推進するため、現地の被害状況の把握や被害原因の分析から、対策の立案、対策の効果検証までを行う集落ぐるみの取組です。
上越市鳥獣被害防止対策協議会では、電気柵の設置や有害鳥獣捕獲だけでは、農作物被害の拡大を防げないことから、鳥獣の出没しにくい環境づくりを推進するため、「集落環境診断」を導入し、地域ぐるみでの自発的な取り組みを支援します。
令和3年度の市内4集落での試行を踏まえ、令和4年度から本格実施しました。
実施にあたっては、協議会内に「推進チーム」を新たに設置し、チーム員である上越市、えちご上越農業協同組合、新潟県農業共済組合上越支所の3機関が相互に協力しながら、一連の取組を推進していきます。
令和4年度は、次の3集落で集落環境診断の取組を進めました。
取組集落
地域の皆さまの負担を軽減するため、従来の実施工程を見直し、可能な限り簡素化して進めています。
地域の方が正しい鳥獣被害対策の知識を共有してから取組を開始します。
(勉強会の講師のみ、外部専門家へ依頼しています。)
地域の方と推進チームが、一緒に現地を回り、動物の痕跡や対策上問題となるポイントを把握します。
集落環境調査で確認した内容を地図に書き込み、可視化します。
地図を見ながら、「どこで」、「いつ」、「どんな」対策を講ずればよいか、自由に話し合います。
具体的な対策を検討するためのワークショップを行い、アクションプランを作成します。
例)草刈りや枝打ち、収穫残渣の処分、電気柵の設置、ハンターの確保・育成、市との役割分担 など
集落で決めたアクションプランを実践します。
今年の対策を振り返りながら、来年の対策を改めて検討します。
6月12日(日曜日)に、「集落勉強会」、「集落環境調査」、「集落地図作成・対策検討」を行いました。
集落勉強会では、町内会長はじめ10名の方が参加しました。講師(外部専門家)から、質疑応答等も含めて約2時間程度の講義を受け、イノシシの生態や被害対策の考え方や具体的な対策方法について、学習しました。
集落勉強会の様子
集落環境調査では、実際に集落を歩きながら、鳥獣被害が発生している場所や、鳥獣の通り道などの痕跡を確認しました。
集落環境調査の様子
イノシシの泥浴び場(ヌタ場)が田んぼの際にありました。
集落地図作成では、集落環境調査で確認した内容を地図に書き込むことで可視化し、地図から見える問題点について話し合いました。
集落地図作成の様子
対策検討では、作成した地図から見えた問題点について、どのような対策を行うか活発な議論が行われました。
対策検討の様子
7月11日(月曜日)に、「合意形成ワークショップ」を実施しました。集落の方など7名が参加し、対策検討で話し合った対策について、「誰が」、「いつ」、「どこで」、「どのように」実施するのかを話し合いました。
合意形成ワークショップの様子
課題 | 問題点 | 対策 | いつから | 誰が | どうやって |
---|---|---|---|---|---|
放置果樹、野菜残さの撤去等 | 放置果樹(柿)がある | 放置果樹を伐採する | 令和4年秋から |
町内各戸 (所有者) |
・人家近くを中心に、穴に埋める ・集落の約束事として、各自収穫を徹底していく ・今年の様子を見て、段階的に伐採していく |
畑等に野菜残さがある
・カボチャは収穫していないものがある ・それ以外は、皆、収穫されている |
エサになるものを置かない |
今年から (いますぐ) |
町内各戸 |
・ポイ捨てをやめる |
|
電気柵の導入 | 電気柵の未整備地がある |
電気柵の設置を進める (0.6ヘクタール) |
令和5年度 | 細野町内会 | 上越市鳥獣被害防止対策協議会の予防柵事業を活用 |
進入路対策(緩衝帯・獣道) | 獣道がある | 箱わなを設置する | 令和4年7月11日(月曜日)設置 | 細野町内会 |
上越市鳥獣被害対策実施隊制度を活用 東頸城幹線(広域農道)沿いの畑に設置 |
下草刈りがされていない | 可能な限り、下草刈りをする | 今年から | 町内の道普請の共同作業 |
・ヌタ場のある獣道の草刈りを行う ・場所が変わったらまた草刈り |
6月19日(日曜日) 参加12名
集落勉強会の様子
集落環境調査の様子
獣道と思われるものなどを見つけました。
集落地図作成・対策検討の様子
問題点 | 対策 | いつから | 誰が | どうやって |
---|---|---|---|---|
放置果樹がある | 収穫する予定がないものは伐採する | 今から |
果樹所有者 |
今後、収穫しない果樹は、果樹所有者が伐採する |
畑に収穫残さが放置されている | 畑の収穫残さを放置しない |
今から |
畑管理者 |
収穫残さを放置しないよう、畑管理者が後始末を徹底する |
放置竹やぶがある | 竹の子を収穫する | 今から | 土地所有者 | 土地所有者は、竹の子の収穫を徹底する |
畑に電気柵がない | 山から平場に出られない(囲う)ように、電気柵を設置する | 未定 | 農家組合 |
集落全域の山際に電気柵を設置する (注)令和4年までは、水稲ほ場のみ電気柵を設置しているが、集落全体の山際に電気柵を設置するためには、多額の費用が必要なことから、国等の補助事業の活用を検討するため、実施年度は未定とした |
緩衝滞がない(山際が草刈されていない) | 可能な限り、道路側から山際まで草刈りを行う | 今から | 土地所有者 |
緩衝帯を作るため、道路脇の土地所有者は、可能な限り、山際まで草刈を行う |
6月25日(土曜日) 参加6名
集落勉強会の様子
集落環境調査の様子
イノシシの泥浴び場(ヌタ場)と思われるものなどを見つけました。
集落地図作成・対策検討の様子
問題点 | 対策 | いつから | 誰が | どうやって |
---|---|---|---|---|
果樹が多い | 果樹の収穫を徹底する | 今から |
果樹所有者 |
原則、果樹所有者が収穫を徹底するが、放置されている場合は、集落内の住民が収穫できるよう取り組む |
竹やぶがある | 竹の子を収穫する |
今から |
土地所有者 |
原則、土地所有者が収穫を徹底するが、放置されている場合は、集落内の住民が収穫できるよう取り組む |
畑に野菜くずがある | 野菜くずを残さないようにする | 今から | 畑管理者 | 原則、畑管理者が収穫を徹底し、野菜くずを残さないようにするが、放置されている場合は、集落内の住民が収穫できるよう取り組む |
下草刈りがされていない | ||||
可能な限り、下草刈りをする | 今から | 集落全員 |
集落の道普請において、可能な限り、下草刈りを行う |
稲刈りも終え、今年度の取組を振り返り、取り組んだものはどれだけ効果があったのか、また、取り組めなかったものはその理由や来年度はどうするかを話し合いました。
12月3日(土曜日) 参加5名
課題 | 問題点 | 対策 | 実施結果・反省点 | 来年度に向けた改善点 |
---|---|---|---|---|
放置果樹、野菜残さの撤去等 | 放置果樹(柿)がある | 放置果樹を伐採する |
・集落内の柿の木にタヌキが来ているが、不作であった ・春先の電気柵設置前はイノシシによる被害はなかった ・集落外に転居した人の家に大きな柿の木があるが、伐採を依頼することは難しい |
・引き続き、人家付近の柿や栗の所有者は、収穫を徹底する |
畑等に野菜残さがある | エサになるものを置かない |
・箱わなを設置した横の畑(ジャガイモ)にイノシシによる掘り起こし被害があったが、その他の畑には被害はなかった |
・畑残さの回収は、集落内に声がけを徹底する | |
電気柵の導入 | 電気柵の未整備地がある | 電気柵の設置を進める |
・電気柵の未整備については、令和5年度の予防事業に申請した ・例年、稲刈り後の10月中旬に、電気柵を撤去しているが、撤去後、イノシシによる畦畔の掘り起こし被害があった |
・特にイノシシ被害があった畦畔は、再度、被害にあう可能性が高いことから、可能な限り降雪前まで電気柵を設置する |
侵入路対策(緩衝帯・獣道) |
獣道がある | 箱わなを設置する | ・箱わなの餌補充は週1回程度実施したが、令和4年は捕獲に結びつかなかった |
・箱わなの餌補充は内部だけでなく、周辺に撒くことで箱わなに誘導するよう工夫する ・令和5年の箱わな設置場所を再検討する |
下草刈りがされていない | 可能な限り、下草刈りをする | ・町内の道普請は春から秋にかけて4回あり、そのうち6月と8月は草刈作業を行っている。(一部、除草剤を散布する場所もあり) |
・イノシシ等が身を隠せる場所を少なくするため、可能な限り、草刈作業を継続する |
12月4日(日曜日) 参加5名
課題 | 問題点 | 対策 | 実施結果・反省点 | 来年度に向けた改善点 |
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放置果樹・竹やぶ、畑の野菜残さの撤去等 | 放置果樹がある | 収穫する予定がないものは伐採する | 集落内や畑周辺の柿や栗の木にイノシシによる被害はなかった。 | ・果樹所有者が適切に収穫を行っているが、収穫残りの果樹がある場合は、降雪前までに埋設等の処理を行う |
畑に収穫残さが放置されている |
畑の収穫残さを放置しない |
・一部の畑にタヌキやハクビシンによる被害はあった。 ・畑の収穫残さの放置は管理者が適切に処理していた。 |
・引き続き、畑管理者に適切な管理を促す | |
放置竹やぶがある | 竹の子を収穫する | ・集落内や市道沿いの竹林にイノシシによる被害はなかった。 | ・イノシシが身を潜めにくくするため、竹林を間引くことなどを行う | |
電気柵の導入 | 畑に電気柵がない | 山から平場に出られない(囲う)ように、電気柵を設置する |
・一部の畑にタヌキやハクビシンによる被害があったが、畑に電気柵を設置している人はいない。 ・令和3年に畑の南側の山際にイノシシによる掘り起こし被害があったが、令和4年はなかった |
・水稲ほ場に電気柵が設置されたことで、令和5年以降に畑に被害が拡大することが想定されるため、畑への電気柵設置を検討する ・電気柵の支援事業については、被害のあった農地のみが対象であるため、支援事業の要件緩和があった場合は、事業の活用を検討する |
侵入路対策(緩衝帯) | 緩衝帯がない(山際が草刈りされていない) | 可能な限り、道路脇から山際まで草刈りを行う | ・道普請で6・7・9・10月の4回、用水路や排水路の草刈を実施しているほか、畑の南側の山際など、所有者が草刈を行っている | ・引き続き、道普請を行うとともに、緩衝帯を作るため、道路脇の所有者から、草刈を実施してもらう |
11月27日(日曜日) 参加4名
課題 | 問題点 | 対策 | 実施結果・反省点 | 来年度に向けた改善点 |
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放置果樹・野菜残さの撤去等 | 果樹が多い | 果樹の収穫を徹底する |
・今年度は、集落内の柿や栗の木に被害はなかった ・収穫残りの柿の実は、カラスやカモシカに食べられた |
・集落内にある柿や栗の木の収穫を徹底し、収穫残さを無くす ・集落外にある収穫しない柿や栗の木は、伐採することを検討する |
竹やぶがある | 竹の子を収穫する |
・人家付近にある竹林は、収穫や間引くなどの対応を行った ・人家付近の竹林にイノシシによる掘り起こし被害があった |
・竹林内の竹の子をすべて収穫することは難しいことから、見通しをよくしてイノシシが潜みやすい環境を減らすために、間引くことを検討する | |
畑に野菜くずがある | 野菜くずを残さないようにする |
・畑内の収穫物にはイノシシの被害はなかったが、ハクビシンにより荒らされた ・畑の外周で草刈りした場所にイノシシが入って掘り起こされた ・市販の獣よけ線香を設置したら一定の効果があった |
・田んぼ付近の畑には田んぼから電気柵を延長し、イノシシの侵入を防ぐ ・使用していない電気柵を畑に設置することを検討する |
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侵入路対策(緩衝帯・獣道) | 下草刈りがされていない | 可能な限り、下草刈りをする | ・集落の道普請は年2回実施しているが、人手が少なくなり、年々、実施延長は短くなってきている | ・可能な限り、集落の道普請を継続して実施する |
効果検証をもって、今年度の集落環境診断の取組は完了しました。令和5年度も、「来年度に向けた改善点」を踏まえ、取組を継続していただくとともに、上越市鳥獣被害防止対策協議会においても、集落における取組が継続・発展していくよう、支援していきます。
令和3年度に取組を開始した「滝寺集落(金谷区)、東俣集落(浦川原区)、河沢集落(吉川区)、及び青柳集落(清里区)」の4集落について、自ら考え、自ら実践する取組が定着していくよう、集落との連携を密にしながら、フォローアップの取組も並行して進めています。
上越市鳥獣被害防止対策協議会では、鳥獣が出没しにくい環境づくりに向けた集落等の主体的な取組を全市に波及させるため、農作物被害が発生している集落を対象に「集落環境診断」を計画的に導入していきます。
鳥獣による農作物被害でお困りの集落は、鳥獣被害対策係までお気軽にお問い合わせください。