地域の農業を残していくために、地域で外部からの就農者を受け入れる体制づくりに取り組む齊藤利光さんと、
ウィンタースポーツと農業を両立するライフスタイルを実現し、中山間地域での農業の可能性を広げている加藤政弘さんをご紹介します。
上越市名立区出身。定年退職後、宇山地区で水稲を栽培。
(宇山耕作組合 組合員13名 耕作面積約20ヘクタール)
4年前、組合員の農業者から突然「耕作をやめたい」という話があったことが、担い手確保を考えるきっかけでした。
日本海が目の前に広がる宇山地区の美しい棚田風景は、地域の誇りであり、この景色を守りたいという強い気持ちに駆られましたが、地区内の農業者は高齢化が進み、後継者もいない状況だったので、正直、このまま耕作を続けていくのは難しいと諦めかけていました。
市に担い手不足の相談をしたところ、「新規就農者サポートモデル事業(注)」を紹介いただきました。
話を伺ったところ地域がまとまれば新規就農者を確保できる可能性があると思い、3年前からこの事業を活用しています。
受け入れ団体の組織化を進め、住居となる空き家の確保や貸付可能な農業用機械の調整のほか、営農や日常生活の相談役を決めるなど、地域を挙げて支援体制を整えました。
地域の願いと思いは一つであり、受入れにあたっての体制づくりは意外にもスムーズに進みました。
(注)新規就農者を受け入れるため、地域を挙げてサポート体制づくりを行う団体を支援する市の事業
昨年11月に出展した新潟市の就農相談イベントで興味を持たれた方がおり、
その後、実際に現地に足を運んでもらうなど、市やJAの担当者も交えて、宇山地区の営農や生活等について月1回の頻度で打合せを重ねてきました。
独立就農を希望していることや、営農経験もあり、すぐにでも耕作を始めたいという相手方の希望と地域の求める人材像が合致したこともあり、めでたく就農に至りました。
就農希望者とのマッチングは難しいと聞いていましたが、意外にもスムーズに事が進みとても幸運だったと感じています。
地域の皆さんも新規就農者が確保できたことを喜んでいます。
今後も、宇山の美しい棚田風景を守るため、地域全体で就農希望者のサポートを続けていきます。
東京都青梅市出身。平成25年に上越市吉川区へ移住。
夏場は柿崎区で水稲を栽培し、冬場はスキー場で勤務。
約20年前から冬は新潟県内のスキー場を中心にゲレンデのコース整備をする傍ら、スノーボード選手の育成をしています。
仕事仲間の多くが夏場は農業を営んでいることを知り、また、都内でも自然豊かな環境で育ったこともあり、自分自身のスポーツトレーニングを兼ねて、幼い頃から身近な存在であった農業に携わることを真剣に考えるようになりました。
平成27年に、都内でも自然豊かな私の出身地、青梅に似ている柿崎区黒岩地区で農業を始めました。
冬場の仕事をメインとし、夏場は水稲を栽培し、農業を営むというライフスタイルを送っています。
平野部でも耕作していますが、中山間地域での米づくりは手間がかかり、それだけでは大きな収益が得られないのが実情です。
機械を使えない小さな水田は、監督を務めるスノーボードクラブの子どもや家族向けに、昔ながらの米づくりを
体験する場として活用し、文化の継承にも取り組んでいます。
元々、自然との触れあいや体を動かすことが好きでしたので、外でできる仕事というのが良いですね。
考え方次第では、農業はスポーツ選手のトレーニングにもなります。
市では農業を前面に押し出して新規就農者を募集していますが、上越市には海もあれば雪山もあり、自然の中で体を動かすことが好きな人達にとっても魅力的な場所です。
そういった人達をターゲットにして、農業者を呼び込むことも一つの方法だと思いますし、農業をライフサイクルの一つとしているスポーツ選手は結構いますよ。
首都圏からスキー場を訪れる人の中には農業体験に興味を持っている人が多くいます。
そのような人たち向けに、いずれは農業体験ツアーを企画し、大型バスで柿崎に来てもらいたいと考えています。
また、農業を営む仲間と耕作面積を広げ、中山間地域での農業を守っていいくとともに、冬場はスノーボード選手の育成に励み、将来的には愛娘をオリンピックに出場させることが私の大きな夢です。