この多嘴瓶は、今熊地内南方の山本山丘陵にある今熊1号窯跡から出土したもので、肩部に3つの注口(嘴)をもちます(本来は4つで1つは欠損)。多嘴瓶は古墳時代の須恵器の子持壷から変化したもので、副葬品もしくは仏具と考えられています。
今熊窯跡出土の須恵器には、ロクロからの切り離しに東海地方で用いられる「糸切り技法」が多くみられます。また、多嘴瓶自体も北陸地方の須恵器窯からの出土例がない一方、猿投窯(愛知県)での出土例が知られていることから、今熊窯跡での須恵器生産は、東海地方から製作技法が伝えられてきたことがうかがえます。
昭和59年6月22日に旧浦川原村の文化財に、平成19年6月1日に上越市文化財に指定されています。