この土器は、平成7年の大イナバ遺跡の発掘調査で出土しました。大きさは口径20センチ、高さ29センチ、底径13センチです。
器形は、頸部が口辺へと短く垂直気味に立ち上がり、胴部は最大径が上半に位置することによって肩部が明瞭に表現され、胴部上半から下半へとすぼまり底部にいたります。
口辺から頸部にかけては文様はありませんが、頸部と胴部の境には、等間隔にいくつかの孔が穿かれているのが大きな特徴です。口縁部を革などで覆い、その直下の孔を利用して皮ヒモなどで固定して使用したものと考えられています。
形が特異であることや、丁寧に作られ、器面が赤で彩色されていることから、祭祀性の強い土器とされています。沈線でひし形や円といった幾何学的な文様が胸部上半に四面にわたって刻まれ、それらの空間部には細かい沈線が斜格子目状に施されています。
長野県を中心とした中部高地方面に多く分布している縄文時代中期の土器の仲間と考えられています。大イナバ遺跡の人々と長野県方面の人々との間に何らかの交流があったことを物語っています。
平成16年12月8日に旧名立町の文化財に、平成19年6月1日に上越市文化財に指定されています。