旧上越市立水族博物館で展示されていたどぶね
「はなきり」とも呼ばれるこの舟は、丸木舟(まるきぶね)(刳舟(くりぶね))の形を残した和船で、特に頸城地方の沿岸部を中心に地曳き網(じびきあみ)の時に使われていました。
舟足(ふなあし)が早く、軽量で、しかも70年に及ぶといわれるほどの耐用年数の長さが特徴です。
この船は造船史をたどる上でたいへん貴重な資料とされています。
造船方法の特色をあげると、まず、船底板の一部と側板の下半部が1本で造られていることです。このことは、丸木の内側をくり抜いて造ったことを示し、丸木舟を造る方法と同じと言えます。
もう一点は、部材の接合に釘を一本も使わず、チキリというクサビとウルシで継ぐ方法をとっていることです。
この2点はどぶねのみに残る造船方法です。また、各部材が舟首から舟尾間で1枚の板であることも注目されます。
どぶねを造るときは、山で根本の曲がった杉を選び、現地で粗割りと乾燥を行った後に運び出し、部材を加工して組み立てていきます。用材の選定から完成まで約8か月くらいかかったということです。
このどぶねは、長さ10メートル、幅1.5メートルで、明治34年(1901年)に造られました。
長年、旧上越市立水族博物館で展示保管されていましたが、水族博物館のリニューアルにともない、平成29年に中郷区の旧岡沢小学校へ移されました。
(注)丸木舟 一本の太い丸太をくり抜いて造られる原始的な舟