椅子に腰かけた一鎮上人77歳の寿像
称念寺の開基とされる一鎮の倚像(椅子に腰かけた像)です。一鎮は越後国妻有庄(現在の十日町市)出身で時宗の開祖一遍(いっぺん)から数えて6代目の遊行上人(ゆぎょうしょうにん)です。
各地で布教をし、京都迎称寺(一条道場)や尾道・西郷寺等を開いたと伝えられており、藤沢・清浄光寺で入滅しました。
本像は像高120.8センチメートルで、檜を用いた寄木細工による等身の木彫像で、合掌する姿は時宗の上人像の特徴を示します。
時宗の祖師像については、京都の長楽寺の重要文化財7件などが伝来していますが、倚像(椅子に腰かけた像)は類例がきわめて少なく、草履を履かせるように作られているのも注目できる点です。また、写実性豊かな頭部の表現や、衣文(えもん)の起伏を少なくした着衣の表現から、仏師運慶の技法を継承した京都七条仏所による制作と判断され、慶派の肖像彫刻として県内唯一の遺品でもあります。
平成6年の修理の際に、像内から木札が発見され、文和3年(1354年)年に制作された、一鎮77歳の寿像であることがわかっています。また、「作 薗阿弥陀仏 入阿弥陀仏」という本像に関わった人物と推測される墨書が発見されました。
本像は、彫刻史の価値とともに、今はない中世の越後府中文化を今に伝える貴重な逸品です。
木造一鎮倚像は、平成4年2月19日に上越市の文化財、平成5年3月30日に新潟県の文化財に指定され、平成11年6月7日に国の文化財に指定されました。