浄土宗の開祖、法然上人の教えが記される二枚起請文
この二幅には、浄土宗を開いた法然(1133~1212年)の法語(仏法の教えをわかりやすく説いた文章)が記されています。また、起請文とは、神仏への誓いを記した文書のことを言います。これらは、いずれも浄興寺9世功観(こうかん)が文明10年(1478年)に記した裏書から、浄興寺8世の周観(しゅうかん)(1399~1465年)が書写したものであることがわかります。この法語が、当時長沼(現在の長野県長野市)にあった浄興寺の常住物(じょうじゅうもつ:寺院の財産)として大切にされていたことがうかがえます。
左は一枚起請文と呼ばれるもので、建暦2年(1212年)1月23日、臨終の間際にあった法然が、浄土往生の奥義(おうぎ)と、信者としての心得を簡潔に一枚の紙に記して弟子に与えたもので、法然の教えの要旨が凝縮されたものとして、古くから珍重されています。原本は、京都の金戒光明寺(こんかいこうみょうじ)に所蔵されています。
右は一枚起請文と同じような内容ですが、本願をたのむことの真意と念仏行者の心得を、より厳しく、しかも長文でつづっています。
浄興寺に、これら起請文が伝来することは、室町時代における地方の真宗の実態を知るうえで、貴重な資料といえます。