説話や奇瑞を表す、少康和尚の像
浄土五祖(じょうどごそ:浄土教で重んじる中国の5人の高僧)の一人、少康和尚(しょうこうかしょう)を描いた、縦87.2センチメートル、横36.3センチメートルの画像です。
少康は中国の唐時代中期に活躍した高僧で、浄土教を大成させた善導大師(せんどうだいし)の教えを世の中に広めるために努めました。少康は、念仏道場を建てて民衆を集め、念仏を行じて広く教化(きょうげ)しました。
この画像は、少康が小児に「阿弥陀仏」を唱えるごとに一銭を与えて念仏を広めた説話や、少康が大きな声で念仏を唱えるたびに口から小さな阿弥陀如来が飛び出して連珠(れんじゅ)のように連なった、という奇瑞(きずい:めでたい不思議な出来事)を表しています。背景には湧きたつ雲と松の木が描き添えられ、上部には少康の法語が書かれています。
画絹(がけん)のやつれがみられ、図像のよくわからない部分があることが惜しまれますが、画風は中国の南宋(なんそう)の影響を受けているといわれています。また、上部に書かれた法語の書風などからみると、南北朝時代から室町時代初期に日本で書写されたものと推定されます。
おそらく、鎌倉時代に流行した南宋の少康画像が原本になっていると思われます。
浄興寺への伝来等については不詳ですが、少康の独立した画像はきわめて珍しく、絵画史の価値共に、たいへん貴重な遺品です。