府中八幡宮に伝わる、文安3年(1446年)の銘を持つ鰐口
府中八幡宮に伝わる、鰐口です。鰐口は寺院の本堂や神社拝殿の正面軒先に吊るされている扁平な金属鳴器のことをいい、参拝の時に布で編んだ綱を振って打ち鳴らします。
この鰐口は、直径約48センチメートル、厚さ約12.5センチメートルの銅製で、両面ともに中心部にある蓮華文の撞座(つきざ)を中心に三重の圏文(けんもん)が巡ります。銘文が刻まれており、文安3年(1446年)、道円という僧侶の願いが成就したので、府中八幡宮の神宮寺(じんぐうじ、神社に附属して建てられた仏教寺院)である岡前寺(こうぜんじ)千手観音に奉納されたものであることがわかります。銘文に刻まれた所在地と現在の所在地が一致することでも、大変貴重です。
府中八幡宮は、天正7年(1579年)、御館の乱で焼失したと伝えられ、岡前寺もこの際に類焼したものと考えられています。江戸時代の絵図には岡前寺の建物が描かれていないことから、焼失後は再建されなかったものと考えられています。鰐口は、この兵火を免れて府中八幡宮の宝物として保存されてきたもので、岡前寺が府中八幡宮の神宮寺であったことも物語り、美術史的な価値とともに、その歴史的価値も高く評価されています。
(銘文)
「奉施入鰐口岡前寺千手観世音越後州頸城郡 府中 右所願成就皆令満足故也 文安三年六月日 施主道円敬白」
・府中八幡宮(上越観光Navi 外部リンク)<外部リンク>