三島神社の御神体、穏やかな童顔形の木造男神坐像、木造女神坐像
牧区宮口にある三島社の御神体としてまつられてきた男女一具の木彫像です。
本来、神道は礼拝の対象としての偶像を持ちませんでしたが、平安時代に入り、神仏習合思想のなかで、神々を仏菩薩の姿で礼拝像が造られるようになりました。両像ともにヒノキ材を寄せて作られており、像高は男神58.8センチメートル、女神45.8センチメートル、表面は漆箔(しっぱく:金箔を漆で接着させる技法)で仕上げられています。
男神像は髻(もとどり)を結い、天冠台(てんかんだい:頭に巻き付ける飾り)をいただく菩薩形で、かつては天冠台の上に宝冠(ほうかん:菩薩などが頭にかぶる冠)をのせていたと考えられています。両肩から衲衣(のうえ:如来がまとう袈裟)をかけて、左足を外にして座った姿であらわされています。両手は腹前に置かれますが、手首から先が左右とも欠失しています。
女神像は長い髪を左右に振り分けて背中に垂らし、着衣は和装で、腰帯を腹前で結ぶ宮廷女性風の姿であらわされています。男神像とは逆に、右足を外にして座っており、両手はひじを曲げて胸前に置きますが、男神同様、手首から先が左右とも欠失しています。
両像ともに眼は細く開き、小鼻がしまり、口を小さくむすぶ童顔形であらわされており、鎌倉時代の制作と推定されています。現在、牧歴史民俗資料館に寄託され、展示されています。