地方分権の本格化をむかえ、それぞれの地域がどのように自立し、自主的な運営を果たすのか、その具体的な内容が問われるようになってきました。少子化の進行や景気低迷にともない財源が限られる一方で、公的なサービスが必要とされる領域や地域が抱える課題は多様化・拡大する傾向にあります。厳しい財政制約のもとでそれらに対応しながら、今後の地域はどのように自立を果たしていったらよいのでしょうか。
今後の地域運営においては、個人や家族、地域コミュニティや民間企業など、地域を構成する各メンバーが自立し、役割と責任とを適切に分担しながら協力して取り組むことが不可欠と考えられます。そこで本研究では、今後の地域の担い手として、とりわけ地域コミュニティの重要性に改めて注目し、これを中心に地域運営を展開する「コミュニティ行政」を提案しています。
コミュニティ行政の基本的な考え方は、「個人や家族ができることは個人や家族で行い、個人や家族ができないことを地域コミュニティが行い、地域コミュニティができないことを行政が行う」ことにあります。地域課題の解決に向け、特に地域コミュニティが中心となって取り組むことにより、比較的小さな地域コミュニティの単位で、地域住民自身がその地域について考え、判断し、行動するといった「小さな自治」を実現し、結果として地域全体が自立を果たすことが将来的なビジョンとしてイメージされます。 ただ、現在では過疎化の進行などにより地域コミュニティの機能が低下していると言われる側面もあり、地域コミュニティが本来備える力を高めるために、活動拠点の整備をはじめとする地域支援策を拡充するなど、行政の果たすべき役割は依然として重要です。また、コミュニティが担当しきれない部分や行政と協力したほうが効果的なものについては、協力関係つまり協働によって取り組むことが不可欠となります。
以上のように、「行政デザイン」とは、地域における行政と市民との関わり方や役割分担のあり方を見直し、整理し、それをデザインしなおす試みです。将来的に、地域コミュニティが担当する領域が拡大することは、言い換えれば行政が扱う業務内容が見直され、真に行政が担当すべき領域が見極められることにもなりますが、その推進や具体化に向けた議論は今後の課題です。
平成13年度に実施した「行政デザインに関する調査研究」は、市民と行政との協働社会の構築と行政改革を同時に目指し、新たな地域運営の在り方を展望するものであり、特に、地域コミュニティを対象とした地域運営の在り方を中心に検討しました。
平成15年度に実施した「コミュニティ行政の推進に関する調査研究」では、平成13年度の研究を深め、上越市を念頭においた具体的なしくみの提案を目的として取り組みました。
構成
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