温泉は世界各地に存在しますが、日本国内には泉質の多様な3,000か所もの温泉地があり、療養、保養、観光などに積極的に活用されていることから、温泉大国ともいわれています。
温泉の歴史は古く、日本三古湯といわれる道後、有馬、白浜温泉は古事記に記載されるほか、箱根、熱海、別府などのように長い歴史の中で多くの利用客を集める温泉地もあります。
一般に、温泉は火山帯に多く存在しますが、掘削技術の進歩などから非火山帯での温泉地も少なくありません。このことから温泉地は全国各地に存在するものの、どちらかといえば東日本や北日本に数多く分布する傾向にあります。
温泉地での宿泊客数は、バブル経済の崩壊後から横ばいもしくは減少傾向にあり、その後インバウンド(訪日外国人客)により増加に転じた地域もありますが、新型コロナウイルス感染症の影響により大きく減少するなど変動がみられます。

出所 環境省「温泉利用状況」をもとに作成

出所 環境省「令和4年度温泉利用状況」をもとに作成
温泉地数(2022年度)は、北海道に次いで長野県が全国2位、新潟県が全国3位。信越県境エリアには、新潟県内の半数以上、長野県内の3割の温泉地があり、日本有数の温泉集積地ということができる。
全国3,000弱の温泉地の中で、宿泊客数(2010年度環境省資料をもとに集計した山村(2015)による) が多いベスト3は箱根、熱海、別府。信越県境エリアの中で全国ベスト100に入る温泉地には、赤倉・新赤倉、池の平・妙高(妙高市)、越後湯沢、湯田中・渋(山ノ内町)がある。
江戸期の温泉番付では、最高位の大関として常に草津、有馬が挙がる中で、渋(山ノ内町)、松之山(十日町市)、関(妙高市)、塩沢(南魚沼市)が前頭として評価されていた。
近年様々な団体が行っている総合ランキングによる評価では、野沢や湯田中・渋などが上位に入る。
国民保養温泉地には、六日町(南魚沼市)、小谷、関・燕(妙高市)が認定されている(2022年現在、全国に79か所)。

凡例
文章中に記載のある温泉地
備考 2022年3月現在
出所 国土地理院数値地図、新潟県環境対策課資料、長野県薬事管理課資料をもとに上越教育大学橋本准教授作成(上越教育大学出版会発行「越境アプローチによる地域学習のすゝめ」より抜粋)
松之山温泉(十日町市)は、草津、有馬とともに日本三大薬湯と称されることもある。
野沢温泉は、日本屈指の還元作用の強い温泉とされ、肌の若返り効果があるとPRしている。また、温泉を管理する野沢組は、地域コミュニティによる自治運営組織の老舗的存在として注目されている。
越後湯沢温泉の高半ホテルは1075年創業であり、県内最古、全国でも9番目に古い老舗企業。川端康成が小説「雪国」の執筆で滞在した。
地獄谷温泉(山ノ内町)の露天風呂にサルが入浴する様子は「スノーモンキー」といわれ、多くの外国人旅行客から注目されている。
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社会の変化は、地域資源に様々な影響を与えています。担い手不足や環境変化といった課題に直面する一方で、新しい技術との融合や、これまでの価値を見直すことで、新たな可能性が生まれることもあります。
社会の変化が地域資源にもたらすものや地域資源が今後直面する課題、あるいは地域資源が秘める新たな可能性などを考えてみましょう。