はじめに
日本列島は、山地と丘陵の面積が全体の約7割を占めており、世界的にみても山地が多く急峻な地形です。このことは、日本列島が新しい造山帯に属しているため山地の隆起が激しく、降水量の多さにより河川による浸食も激しいことに由来しています。
約2,000万年前、日本列島はアジア大陸から離れていき、その真ん中で折れてフォッサマグナ(地質学的な溝)の海ができ、そこに土砂が流れ込むなどして砂や泥の厚い地層が形成されました。約300万年前には日本列島全体が隆起を始め、その後の地殻変動や火山活動、河川による土砂の堆積などで山地や平野が造られました。現在の地形は、そのほとんどが約200万年前以降に形成されたものといわれています。
日本の地形(標高)
出所 国土地理院ウェブサイト 自分で作る識別標高図を加工して作成
このエリアにはどんな特徴があるの?
高低差のある地形、短い河川と最長河川
- 糸魚川市内の標高は、0mから2,766mまで分布しており、海岸からの標高差は日本有数。また、海底も起伏に富んでおり、水深1,000mを超える深海が海岸近くにあることも特徴的。
- 関川水系は、2,000m以上の高山を水源とする全国の一級水系の中で4番目に距離が短く、勾配の大きさは日本有数。
- 信濃川(千曲川)の流路延長は367kmで全国1位。埼玉・山梨・長野県境の甲武信ヶ岳から、長野・北信地域や魚沼地域を経由して新潟市に至る。
新旧の多様な地層・地形
- 糸魚川―静岡構造線の西側は1億年前より古い地層や岩石で形成されるが、東側は2,000万年前より新しい。
- 新潟・長野県境の関田山脈は、約100万年前に海や平地だったが、その後の隆起や褶曲によって1,000m級の高さにまで急成長した。「若い」山脈としては全国トップクラスの高さを持つ。
- 信濃川(千曲川)は、約100万年前まで上越地域に流れ込んでいたが、その後急激に形成された山脈や丘陵などとともに大きく曲がり、日本最長の河川となる。
地形・標高の分布 信越県境エリア+α

凡例
フォッサマグナの範囲(縁は糸魚川から静岡構造線、東縁は新発田から小出構造線および柏崎から千葉構造線)
地すべり防止区域の集中地帯
日本百名山
集中する地すべり地帯
- 地すべり防止区域の指定箇所(2023年)は、数・面積ともに新潟県が全国1位。中でも県内1位の上越市をはじめ上越・魚沼地域の丘陵地帯にその7割が集中する。
- 同じく長野県が全国3位。中でも長野・北信地域の一部(千曲川やその支流の犀川、姫川で囲まれた地帯)に集中する。
その他特徴的な地形
- 日本百名山は、信越県境エリア内に10座以上、その周辺にも数多く存在。海のそばにありながら数多くの百名山に囲まれる地域としては日本有数。
- 津南町付近にある信濃川の河岸段丘の規模は、日本最大級と称されることもある。
- 清津峡(十日町市)は日本三大渓谷の一つと称される。
その特徴が生まれたのはなぜ?その特徴から生まれたものは何?
地形の因果関係図 [画像ファイル/312KB]
ファッサマグナの上の地形
- 2,000万年前、日本列島はアジア大陸から離れる際に真ん中で折れ、深いフォッサマグナの海ができた。その西端が糸魚川-静岡構造線であり、このエリアはほぼフォッサマグナ上にある。そこに土砂が流れ込むなどして砂や泥の厚い地層が形成された。
- 日本列島全体は300万年前に隆起を始めたが、上越市周辺は100万年前も海や平地であり、千曲川が流れ込んでいた。
- 100万年前から現在までの短期間に、火山活動や隆起・褶曲などの地殻変動により、現在見られる山地や丘陵地、河川や平野部の多くが形成された。
- この過程でできた丘陵地の地層は十分に固まっておらず、隆起の過程で生じた無数の割れ目に水が浸み込み軟弱であるほか、地層がさらに隆起して不安定な地形となった。
豪雪地帯の形成
- 日本海や高い山脈が形成された結果、日本海で発生した積雲が山脈にぶつかり、大量の雪が降るようになった。
(関連ページ)02「気候」
多様な植生の分布
- 多様な地形がコンパクトに集積することから、多様な植生を身近に見ることができる。
(関連ページ)03「植生」
国産エネルギーの生成
- フォッサマグナの地形・地質に特有の地殻変動により、石油・天然ガスが集積しやすく、採掘しやすい地形となった。
- 豪雪による豊富な水量とともに、河川の勾配の大きさを利用した水力発電が行われた。
(関連ページ)04「エネルギー」
主要な交通網の形成
- 周辺を高い山脈に囲まれた地形のため、主要な交通網を通すことのできる場所は自ずと限定的になり、交通の要衝となる地域が生まれた。
(関連ページ)05「交通」
棚田の形成による米づくりの発達
- 地すべりがもたらすのは、災害だけではない。土地が攪拌され、地すべり面を地下水が流れ下ることなどにより、米づくりの適地となり、美しい棚田の景観を生み出した。
(関連ページ)06「米」
山岳信仰の発達
- 険しい山々は、昔から人々の信仰の対象となり、修験道など山岳宗教の修行の場ともなった。
(関連ページ)19「霊山」
観光資源等の誕生
(関連ページ)15「温泉」、16「スキー」、17「ニューツーリズム」
これまでとこれからについて考えよう!
社会の変化は、地域資源に様々な影響を与えています。担い手不足や環境変化といった課題に直面する一方で、新しい技術との融合や、これまでの価値を見直すことで、新たな可能性が生まれることもあります。
社会の変化が地域資源にもたらすものや地域資源が今後直面する課題、あるいは地域資源が秘める新たな可能性などを考えてみましょう。