国内の旅行客数は、戦後の高度経済成長期に急増し、全国各地でレジャー施設の整備やリゾート開発などが進みましたが、その後は環境問題への懸念、バブル経済の崩壊、旅行ニーズや旅行形態の多様化などから、観光の在り様も変わりつつあります。2000年に入ってからは、産業観光やエコツーリズム、グリーンツーリズム、ヘルスツーリズムなど新たなツーリズムの振興も行われてきました。
このうちグリーンツーリズムは、1990年代から農林水産省の呼びかけで始まり、その後全国的に普及しました。当初の宿泊場所はスキー民宿などが中心でしたが、その後は一般農家にも普及しています。
(注)スポーツ合宿は、比較的伝統のある交流形態であり、一般的にはニューツーリズムに含まれませんが、ここでは地域の自然・文化を活用し、教育・学習の要素を含んだツーリズムという観点からあわせて説明します。

出所 農林水産省「2020年農林業センサス」をもとに作成

出所 森林セラピーソサエティホームページをもとに作成
白馬村は、登山客の受入れをきっかけに民宿発祥の地とされる。
飯山市戸狩では、学生の合宿地として民宿の隣接地にテニスコートや体育館などを整備。須坂市の峰の原高原などでも盛ん。
信濃町や妙高市には、高地トレーニングの環境(クロスカントリーコース、競技場、急坂、宿泊施設など)が充実する。合宿の町(郷)と称され、箱根駅伝の名門校や実業団チームが訪れる。
実施集落数は、岩手県に次いで長野県が全国2位、新潟県が全国4位。信越県境エリアでも様々な集落が取り組んでいる。
飯山市では、農村休暇法が制定された1994年から受入れを開始し、数々の表彰を受ける。
十日町市と上越市で推進する越後田舎体験事業は、1998年から大都市の小・中・高等学校の団体旅行を中心に受入れを行う。地域自立活性化優良事例「総務大臣賞」など数々の表彰を受ける。
子ども農山漁村交流プロジェクト(2008-09年)では、全国の先導型モデル地域16地区のうち上越市と飯山市が選定された。

凡例
森林セラピー基地
ロングトレイルルート
信越トレイル
塩の道トレイル
スノーカントリートレイル
あまとみトレイル
ぐんま県境稜線トレイル備考 2024年3月現在
出所 国土地理院数値地図、各ロングトレイル・各市町村のホームページをもとに上越教育大学橋本准教授作成(上越教育大学出版会発行「越境アプローチによる地域学習のすゝめ」より抜粋)
森林セラピー基地には、2006年に信濃町と飯山市が第1期認定を受けたほか、信越県境エリアでは木島平、山ノ内、小谷、津南、妙高を含む7市町村が認定を受けている(2023年現在、全国に64か所)。
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社会の変化は、地域資源に様々な影響を与えています。担い手不足や環境変化といった課題に直面する一方で、新しい技術との融合や、これまでの価値を見直すことで、新たな可能性が生まれることもあります。
社会の変化が地域資源にもたらすものや地域資源が今後直面する課題、あるいは地域資源が秘める新たな可能性などを考えてみましょう。